
Thoughts
なんかいいよね
私が住まいについて考えるとき、いつも心のどこかにある言葉です。
家づくりを考え始めると、多くの人は間取りや広さ、性能や予算について考えます。
もちろん、それらはどれも大切なことです。
けれど私は、その前にひとつお聞きしたいことがあります。
どんな暮らしがしたいですか。

休⽇の朝は、どこで珈琲を飲みたいですか。
⼣暮れには、どんな景⾊を眺めていたいですか。
家族とどんな時間を過ごしたいですか。
家は、⼈⽣の多くの時間を過ごす場所です。
だから私は、建物そのものよりも、そこで営まれる暮らしから考えたいと思っています。
朝、やわらかな光で⽬覚めること。
窓を開けると、ふっと⾵が通り抜けること。
庭の緑が季節の移ろいを教えてくれること。
家族が⾃然と同じ場所に集まり、それぞれが思い思いの時間を過ごしていること。
そんな何気ない⽇常の積み重ねが、暮らしを豊かにしていくのだと思うのです。
住まいには、数値では測れない⼼地よさがあります。
天井の⾼さがほんの少し違うだけで落ち着きが変わり、窓の位置が少し変わるだけで光の表情は豊かになります。
⽊の⼿触りや壁の質感。
庭との距離感や視線の抜け⽅。
そうした⼀つひとつは⼩さなことかもしれません。
けれど、その⼩さな積み重ねが住まいの居⼼地をつくり、やがて「なんかいいよね」と感じる空気を⽣み出していくのだと思います。

私はまず、その⼟地に⽿を澄ませます。
どこから光が差し込み、どこへ⾵が抜けるのか。
窓の先にはどんな景⾊が広がっているのか。
その場所にしかない魅⼒は何なのか。
そして、住まい⼿であるあなたのことを考えます。
どんな時間を⼤切にしたいのか。
どんな場所に⼼が落ち着くのか。
これからどんな⽇々を重ねていきたいのか。
そんなことを想像しながら、⼀つひとつの線を引いていきます。
家は完成した瞬間がゴールではありません。
家族とともに歳⽉を重ねながら、少しずつ育っていくものです。
柱についた⼩さな傷も。窓辺に並んだ植物も。
そこで過ごした時間の記憶として住まいに刻まれていきます。
だから私は、⼗年後も⼆⼗年後も愛着を持って暮らせる住まいをつくりたいと思っています。
流⾏を追いかけるのではなく、暮らしに寄り添うこと。
建築が主役になるのではなく、そこに暮らす⼈の⽇常が主役になること。
そして、その⼟地の⾵景に静かに馴染みながら、暮らしをやさしく包み込むこと。
そんな住まいを、これからも⼤切につくり続けていきたいと思っています。
いつか完成した住まいで、
窓辺に腰掛けながら。庭を眺めながら。家族と⾷卓を囲みながら。
理由はうまく説明できなくても、
「なんかいいよね。」
そう感じていただけたら。
私にとって、それが何よりうれしいことです。